「破面に、感情はないのか」


寝台に腰掛けたまま、ふと女は俺に問う。
しかし顔はこちらには向けられず、足をユラユラと揺らしながら俯いたまま。


「『感情』か。下らんな。そんなもの、俺達破面には必要無い。あったとしても、それは邪魔になるだけだ」

ただ思った事を、口にしただけ。それ以外には何も無い。

女の表情は、ここからは見えない。


「本当に、少しも無いのか」

「何度聞こうが答えは同じだ。お前は聞き分けの悪い女の様だな」


未だ表情の見えない女をその華奢な身体ごと、寝台の上に組み敷いた。
開けた服の間から、透き通る様な白い肌が覗く。


「私をこうして毎晩抱く事にも、何の感情も無いと言うのか」

「ある筈が無い」

「愛さえも?」

「無論だ」


やがて女は口を紡ぎ、唇を噛んで声を殺した。

漆黒の髪が、女の瞳を隠す様に覆う。

その髪の隙間、
白い頬を滴が跡を付けて流れ落ちていくのを、見た気がした。